海外ミステリの名アンソロジーの極致「天外消失」 著者:クレイトン・ロースンほか

アーサー・ウイリアムズの「この手で人を殺してから」を読んでみたくて手にとった本。

まず、「この手で人を殺してから」という作品を知っているでしょうか?

これは、自分が犯した完全犯罪を告白する体で書かれた作品になっており、主人公は元妻を殺し、容疑者として警察から目をつけられるが、見事な証拠隠滅(死体を飼っているひよこに食べさせたりする)に成功。結局完全犯罪が成立し、「完全犯罪やっちゃった~(てへぺろ(・ω<」という物語。完全犯罪のため、警察が犯人を追い詰めるわけでもなく、犯人である主人公も特に罪悪感を感じて自首するわけでもなく、なかなか薄気味悪いエンディングを迎える。

しかもこの作品の作者であるアーサー・ウイリアムズは覆面作家であり、この作品を発表して以降、一切他の作品が世に出ていない。そのため、巷では「本当に完全犯罪を犯した人が遊び半分で作品にしたのでは?」との憶測が飛ぶことに。

しかし、このアンソロジーの各冒頭には筆者の略歴が載っており、実はアーサー・ウイリアムズはジャック・M・ビッカムというアメリカの作家らしいということが判明。

「おいおい、そういうことは書かなくていいだろ~、古坂大魔王とピコ太郎って別人でしょ~」となってしまった。まあしょうがない。

またこの作品の他にも、最後の一行で騙されたことに気づく「死刑前夜」、メリーさんの電話の元祖(と個人的に思っている)「後ろを見るな」、火星人版シャーロック・ホームズ「火星のダイヤモンド」、「そんな密室トリックありかよ!」という「最後で最高の密室」などが個人的には面白かった。

まとめとしては、今から数十年前に発表された作品ばかりだが、今でも新鮮に読める作品が多かった。短編集ということもあり、時間が少しあるときにちょびっと読めるので、スキマ時間を有効活用してみたい人は読んでみてはいかがだろうか。

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)